【お電話でのお問い合わせ】 TEL:03-5422-7668

オーナーいち押し 2026年2月 歌川広重/Hiroshige Utagawa『冨士三十六景36枚セット(桐箱入り)』

冨士三十六景36枚セット(桐箱入り) 歌川広重 Hiroshige Utagawa
冨士三十六景36枚セット(桐箱入り) 歌川広重 Hiroshige Utagawa

歌川広重が北斎を強く意識して制作したとされる《冨士三十六景》の中でも、とりわけ傑作と名高い一図です。東海道の由井宿と興津宿の間、薩タ峠付近から望む富士山の景観を捉え、手前で激しく飛沫を上げる大波と、遠景に広がる駿河湾の穏やかさが鮮やかな対比を成しています。荒々しい波の表現は北斎の《神奈川沖浪裏》を思わせ、広重が巨匠に挑む気概を感じさせる作品です。

今月のオーナーいち押し作品は、歌川広重「冨士三十六景」の桐箱入りセットです。制作を手がけたアダチ版画研究所は、江戸時代の浮世絵版画の技術を現代に継承する数少ない工房で、熟練の彫師・摺師が当時と同じ材料と工程で作品を復刻しています。人間国宝の職人が漉いた和紙を使用し、和紙に染み込む色の深みや、版木が生む独特の表情まで、広重が描いた世界を当時のままの息づかいで味わえる仕上がりです。

広重は「東海道五十三次」で名所絵師としての名声を確立しましたが、晩年に描いた富士図では、北斎の力強い造形とは異なる、色彩のゆらぎや空気の湿度までも感じさせる叙情的な表現が際立ちます。季節や天候の移ろいを静かに映し出すその筆致は、まさに「風景の詩人」とも呼ばれる広重の真骨頂といえるでしょう。

本シリーズは単品での流通が多く、全図揃いのセットは現在では極めて稀少です。さらに、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは日本の浮世絵から深く影響を受けたことが知られていますが、広重の作品は特に深く研究しており、模写作も複数残しています。ゴッホの代表作「タンギー爺さん」の背景には、本作に含まれる「冨士三十六景 さがみ川」が描かれていることが確認されています。

世界を魅了した広重の静謐な富士。その美しさと、アダチ版画研究所の技が息づく本セットならではの深い味わいを、ぜひこの機会にご堪能ください。

ギャラリーファインアーティスト オーナー 江尻文子

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!